ラポールは橋を架けるって意味じゃないよ

 よくコミュニケーション術(特にNLP関連)の書籍や記事の中で、会話相手との信頼関係を築くことを「ラポール」と呼び、その語源をフランス語で「橋を築く」であると説明しているものが非常に多い。Google検索してみると、現在(2016.1.18)1万件以上あることがわかる(※「ラポール 橋をかける」および「ラポール 橋を架ける」を合わせて)。

 

 自分は純粋にこの説明を信じきっていたのだが、ふと思いついて改めて確認してみたところ、フランス語の「ラポール(rapport)」には「橋を架ける」という意味はない、ということが分かった。

 

 フランス語の rapport は端的に言って「関係」という意味以上のものはない。ただ、英語でいえば、relationship というより intimacy (※一般に男女の親密さを意味する)に近い意味らしい。

 

 なぜこうした誤りが一般的になっているのだろうか。以下は想像でしかないが、まずフランス語で「橋」を意味する単語は、ポント(pont)であり、言葉の響きが似ていること。もう一つは、日本語で「関係を築く」という慣用句があることから、これらの言葉との混同で(恐らくNLP関係の第一人者が)「ラポールは橋を架けるという意味」と説明したものと考えられる。

 

 こうした説明は、あくまでラポールを平易に説明するための便宜的なものだったのか、それとも完全な勘違いだったのか、それとも全く別な経緯による誤解の流布だったなのか。個人的には知る由もないが、とにかく「ラポール」には「橋を築く」という意味はないようだ。